黒鉛球状化処理
黒鉛がなぜ球状化するのかについては、いろいろな説がありますが、本当の原因についてはハッキリとしていません。
しかし、球状化剤であるMgやCa更にCeは脱酸剤であり、脱硫剤であり、溶湯中で気泡を発生させるなどの働きをします。
又、接種の場合と同様に、球状化処理後溶湯状態で放置しておくと、その効果が消失していく性質があります。 従って、処理後はすみやかに鋳込むことが必要となります。
■球状化剤の成分例
添加合金の種類
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添加量(%)
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Mg歩留り(%)
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反応の程度
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備考
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純 Mg | Mgとして 0.6~1.0 |
5~10 | 甚大 | |
Cu-Mg (50 : 50) (80 : 20) |
0.6~1.0 0.2~0.5 |
5~10 10~20 |
甚大 小 |
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Ni-Mg (50 : 50) (80 : 20) |
0.5~0.7 0.2~0.5 |
5~10 10~20 |
甚大 小 |
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Fe-Si-mg (45 : 45 : 10) (30 : 30 : 20) (45 : 30 : 5) |
0.2~0.4 0.2~0.4 |
10~30 10~30 |
小 小 極小 |
一般に多く用いられている。 最近Mg3%程度のものまで 使用されている。 |
Ni-Si-Mg (10 : 50 : 20) | 0.2~0.4 | 10~30 | 小 | |
Ca-Si-Mg (30 : 55 : 10) (20 : 45 : 20) |
0.2~0.4 0.2~0.4 |
10~30 10~30 |
小 | |
R-Ca-Si (13~30) : (10~13) : (50~60) |
小 | |||
Fe-Ca-Si (12~20) : 18 : (40~55) |
小 | |||
Ca-Si (30~35) : (55~60) | Caとして 0.2~0.6 |
小 | Ca-Siのみではなく、これの粉末にCa塩化物を被膜したものを使用。 | |
Mg F4 | 小 | Mgの化合物、粉末 | ||
ミッシュメタル セリウム強化メタル イットリウム・ミッシュメタル |
小 小 小 |
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Fe-Si | 特に含有酸素の低いもの |
球状化剤
球状化剤としてはMg系、Ca系、更にCe系など多くの種類がありますが、一般的にはMg系のものが多用されています。
このMgは安価ですが、沸点が低いため溶湯と接触すると爆発的に反応するため、様々な工夫がなされています。
一つはFe-Si などのSiと合金化させてMgの濃度を低くし、反応を抑える方法。
もう一つは、球状化処理を行う容器内を高圧に保つことで、Mgの爆発的な反応を抑える方法です。この方法では安価な純Mgが使用可能なため、大量生産が行われる鋳鉄管などの生産に使用されています。
球状化処理方法
[ 合金化Mg使用 ]
サンドイッチ添加法
取鍋の底にポケットを付け、そこにMg合金を入れ、その上に溶湯が取鍋の規定の位置まで満たされるまで反応を抑制するためのカバー剤を被せます。
溶湯はポケット部に直接当らないよう速やかに注入します。
使用する取鍋はMgの歩留りを良くするため深さを直径に対し、1.5 ~2.0 程度の深目とします。又、使用合金のMgは8~3%程度の比較的低濃度のものが使用されています。
現在では、この方法が最も多く実用されています。
プランジング法
黒鉛製、又は鋼製の孔の開いたベル状の容器にMg合金を詰め、それを溶湯中に押し込んで反応させる方法です。
又、ベル状容器の代わりに合金ブロックの中央に金棒を鋳ぐるんだキャンデー 法もこの一種です。
この方法に使用されるMg合金はサンドッチ法に比べ、高Mg合金が使用されています。この方法はサンドイッチ添加法が普及するまでは多く使用されていました。
インモールド法
鋳型内に球状化剤を入れる反応室を設け、脱硫した溶湯を注入すると反応し、その後鋳型の製品部分に入るものです。
鋳型内での反応であるため、これに使用される合金はMg濃度の低いものが使用されます。
この方法の欠点は反応室設置部分は製品とならず、その分歩留まり低下となることにあります。
[ 純Mg使用 ]
圧力添加法・・・・・ 圧力添加法 圧力容器法
この方法は反応させる容器内に圧力をかけ、Mgの蒸気圧を抑え込み蒸気化したMgを溶湯中に圧力で押し込むものです。
大気中でMgを添加すると、爆発的な反応で溶湯が飛散して危険で、Mg歩留りも低くなりますが、圧入で反応も穏やかでMg歩留りも向上します。
方法としては、取鍋自体を圧力容器とする方式と、圧力容器の中に取鍋を入れ、空気圧を3~8Kg程度にかけ、その後圧力シリンダーでMgを溶湯中に押し込み反応させる方式があります。
圧力添加法
圧力容器法
転炉法(コンバーター法)
転炉の底部の一角に孔の開けられた黒鉛製の仕切り板で囲まれた反応室を設置し、転炉を水平状に倒した状態で、反応室にMgを装入して蓋をします。
その後、転炉を垂直に起こすことで、溶湯とMgが接触し反応するものです。反応状況のコントロールは仕切り板の孔のサイズで調整されます。
転炉法