銑鉄鋳物にはどのようなものがあるのか?

 

高炉で生産される銑鉄と同様に、鉄の中に炭素や珪素を多く含有しており、且つ、銑鉄を原料とし生産されることから「銑鉄鋳物」と称していますが、別名として「鋳鉄」ともいわれています。

この銑鉄鋳物には、その製造方法により「ねずみ鋳鉄」「球状黒鉛鋳鉄」「可鍛鋳鉄」 などがありますが、先ず、その違いについて説明します。


▼ねずみ鋳鉄


この鋳物を破断すると、その断面が灰色で あるため「ねずみ鋳鉄」といわれますが、別名を「普通鋳鉄」ともいいます。
ねずみ鋳鉄は太古から生産されてきた鋳物で、最もポピュラーな鋳物です。
この鋳物の断面を磨き、顕微鏡組織を見た写真を右に示していますが、細長く黒いものが黒鉛です。この黒鉛は鋳物が鋳型に注入されて凝固を開始してから完了するまでに生成します。
鋳物は冷却とともに収縮しますが、この黒鉛の生成時の膨張で冷却による収縮を補い、鋳型通りの鋳物になるなど、ねずみ鋳鉄では黒鉛の生成が重要な働きをします。
又、鋳物の強度は黒鉛の大きさ、更に分布状態によって変化します。(黒鉛自体はほとんど強度がないため) 黒鉛が小さく均一に分布しているほど強度は強くなります。
黒鉛の大きさは炭素や珪素が少ないほど、更に鋳造してから固まるまでの冷却速度が早いほど小さくなります。
従って、強度を上げるには炭素や珪素成分を少なくしますが、あまり少なすぎると黒鉛が生成せずセメンタイトという炭化物を生じて、硬くて脆い鋳物となります。
又、冷却速度の早い薄肉物でも同様です。
その外、鋳込み直前の溶湯に珪素等を含んだ合金を少量添加し接種処理を行うことで黒鉛の分布を均一化することが出来ます。

 

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ねずみ鋳鉄の顕微鏡組織
ねずみ鋳鉄の顕微鏡組織

上の写真は平面的に見たものですが、立体的に見た場合、薔薇の花びらのようにグループ毎に繋がっています。
ねずみ鋳鉄が破壊するときは、この強度のない黒鉛に沿って破断します。

引張り強度…100〜350Mpa


▼球状黒鉛鋳鉄


ダクタイル鋳鉄ともいい、鋳込み直前の溶湯にマグネシウムやカルシウムなどを含んだ黒鉛球状化剤を添加することによって、先のねずみ鋳鉄で示した黒鉛形状のものが右側の写真のように球状の黒鉛形状に変化します。
強度のない黒鉛が球状で独立しているため、この鋳物は鋼と同程度に、粘り強く強靱な鋳物となります。黒鉛以外の基地組織がフェライト、パーライト、オーステナイトになるに従い、伸び  は低下しますが引張り強度は高くなります。
尚、球状化処理した溶湯を長時間そのまま保持した場合、その効果は消失していきます。
従って、球状化処理したら直ちに鋳込み凝固させる必要があります。

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球状黒鉛鋳鉄の顕微鏡組織
球状黒鉛鋳鉄の顕微鏡組織
引張り強度…370〜800Mpa
伸び…2〜20%


▼可鍛鋳鉄
 
ねずみ鋳鉄や球状黒鉛鋳鉄は鋳造した時点 で、黒鉛を生成させますが、可鍛鋳鉄では炭素や珪素成分を低く調整し、鋳造時点では黒鉛は生成させず、鉄と炭素の化合物であるセメンタイト組織とします。その後、熱処理することでセメンタイトから鉄と炭素を分離し、黒鉛を生成させます。
この熱処理の方法によって、「黒心可鍛鋳鉄」や「パーライト可鍛鋳鉄」更に「白心可鍛鋳鉄」などに分類されます。

「黒心可鍛鋳鉄」・・2段階の熱処理を行います。
・第1段階では930 〜950 ℃の温度で20〜25時間かけてセメンタ イトを分解し黒鉛を生成させます。
・第2段階では700 〜750 ℃、25〜40時間で黒鉛以外の鉄の部分を柔らかいフエライト組織にします。

「パーライト可鍛鋳鉄」・・2段階の熱処理

第1段階の熱処理は黒心可鍛鋳鉄の場合と同様ですが、その後の処理方法には目的によって各種あり、一例をを示します。
・第1段階;930 〜950 ℃、20〜25時間で黒鉛の生成を生成させた後、油焼き入れ又は空気中で強制冷却します。
・第2段階;650 〜720 ℃、0.5 〜6 時間で黒鉛以外の鉄の部分を強いパーライト組織とします

「白心可鍛鋳鉄」

この鋳鉄は鋳造後の熱処理で含有している炭素を除去し(脱炭)、鋼と同じように黒鉛のない組織としたものです。
熱処理;酸化鉄、更に酸化性の強い雰囲気中で1000〜1050℃で40〜70時間保持します。鋳鉄中の炭素は拡散により酸化脱炭されます。
この方法は固体間の脱炭であるため、大きな(厚肉)鋳物には適しません。 、
この可鍛鋳鉄の日本国内での生産は明治末期に始まり、ねずみ鋳鉄にない高強度を有していたため、強靱鋳鉄の代表格となります。又、国内での生産量の大半は黒心可鍛鋳鉄で占められています。
しかし、球状黒鉛鋳鉄の普及と共に、コスト更に材質的な面から、球状黒鉛鋳鉄に切り替わりつつあります。

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鋳造時の顕微鏡組織
鋳造時の顕微鏡組織
 
黒心可鍛鋳鉄の顕微鏡組織
黒心可鍛鋳鉄の顕微鏡組織
 
パーライト可鍛鋳鉄の顕微鏡組織
パーライト可鍛鋳鉄の顕微鏡組織
 
白心可鍛鋳鉄の顕微鏡組織
白心可鍛鋳鉄の顕微鏡組織
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