溶湯処理

溶解された溶湯は鋳型に注入するまでに、 いろいろな溶湯処理が行われます。その処理方法について簡単に紹介します。

▼脱硫処理
ねずみ鋳鉄の場合は、硫黄の害はマンガンで中和することができるため、脱硫処理を 行うことはまずありません。
しかし、球状黒鉛鋳鉄を生産する場合、硫黄は黒鉛球状化剤のMgと反応して黒鉛の 球状化を阻害するため、球状化処理前の硫黄が0.02% 以下となるように脱硫処理が必要となります。
この脱硫処理については、溶解炉によって も異なります。
低周波炉や高周波炉などの電気炉溶解では硫黄の少ない主原料を選択しておけば、他からの硫黄の混入はないので脱硫処理は必要がありません。
しかし、酸性キュポラ溶解の場合は燃料で あるコークスから硫黄が混入するため脱硫処理が必要となります。
脱硫反応を効率よく行うには、脱硫剤と溶湯をいかにうまく接触させるかにかかっています。従って溶湯を強力に攪拌し接触頻度を高める方策がとられます。
この方法にはいろいろありますが,2点を紹介します。

脱硫剤の種類と問題点
  1. カルシュウムカーバイト(CaC2)
    溶湯の温度低下が少なく、少量で硫 流効率よく脱硫可能という利点があるが、脱硫滓からアセチレンガス が発生,悪臭や安全性から問題がある。
  2. ソーダー灰(Na2CO3)
    脱硫効率は良いが、温度低下大で白煙の発生、溶融脱硫滓となって耐火物の侵食や製品への滓の巻込耐火物の侵食や製品への滓の巻込みの原因となりやすい。
  3. 石灰系(CaO)
    蛍石を5%程度配合したものが良い とされるが、カルシュウムカーバイト の2 倍の添加が必要で温度低下がやや多い。脱脱硫滓は固形状で臭いもなく、廃棄上の問題が少ないという利点があるが、 脱硫滓の廃棄量が多くなる。
ポーラスプラグ法
ポーラスプラグ法


取鍋の底に設置した通気性のある耐火物を通じて窒素ガスを吹き込み、その攪拌力を利用して脱硫剤と溶湯を接触させ、脱硫反応を促進させる方法です。
この方式では出湯後、取鍋で一鍋毎に行うバッチ式と、キュポラの樋の中間に設置し連続的に脱硫処理を行う方式があります。

揺動取鍋法


コーヒーカップの中の砂糖を溶かすためカ ップを揺り動かす要領で、取鍋を偏心運動させ、取鍋内の溶湯を攪拌することで脱硫剤と溶湯を接触させ、脱硫反応を促進させる方法です。この方法には一方向だけに回転させるものと、正逆回転して攪拌効果を高める方式があります。
この方法の弱点は小容量処理の場合、温度降下がやや大きいことにあります。
その他、球状化処理時に脱硫に消費されるMg量を予測し、その分 余分に球状化剤を添加し、脱硫と球状化を同時処理する方法もあります。この場合、脱硫滓の除去作業が軽減され、更に脱硫滓の発生量も減少するという効果もあります。

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接種の効果例(チル防止)
接種の効果例(チル防止)
 

黒鉛組織改善

黒鉛組織改善

▼接種処理


接種とは溶湯にある物質を少量添加し、その合金効果以上の物理化学的変化を与えることをいいます。
尚、この効果には接種後、時間経過と共に消失していく現象があります。(フェーディング)
従って、接種後すみやかに鋳込む必要があります。
具体的な効果としては、
・ねずみ鋳鉄では鋳込み直前に処理しますが、低炭素当量成分ほど、その効果は高くなり
@黒鉛を小さく均一にし強度を向上。
A薄肉部と厚肉部の組織を均一化。
Bチル(セメンタイト)を防止し切削性を向上。

させる効果があります。
・球状黒鉛鋳鉄では球状化処理後に接種し

@球状黒鉛を小さく数多く生成させ靱性を向上。
Aチル(セメンタイト)を防止し切削性を向上。

させる効果があります。


接種剤

一般的には50%Si,75%SiのFe-Si が使用されますが Sr,Zr,Baなどを合金化した接種剤が各種市販されています。

■一般的な接種の仕方
接種 の目的
セッシュ
溶湯 の性質
ヨウトウ
接種剤および量(%)
注意事項
薄肉部のチル化防止 酸化による場合 Fe-SiまたはCa-Si
0.1〜0.2
炭素、珪素が低く、白銑化
傾向の大なるときは
Fe-Siの量を0.4%くらいに
増す(強度はやや低い)
C、Siの低い場合 Fe-Si 0.1〜0.2
強度の改善
白鋳鉄の場合 Ca-Siまたは高Al
Fe-Si 0.2〜0.4
過剰接種にならないよう
注意する。
接種量が多いと強度は逆に
低下する
接種後15分以内に鋳込む
ねずみ鋳鉄の場合 Ca-Si 0.2〜0.3
酸化している場合 バアイ Ca-Si 0.2〜0.4
材質を均一にする
  Ca-Si 0.1〜0.2  
フェライトの析出を阻止
C、Siの高い場合 Si-Zr、Fe-Cr  
厚肉部のフェライト化 Ca-Si

接種の方法

一般的には取鍋内で処理されますが、フェーディング 防止の観点から、取鍋から鋳型に注入する時に連続的に添加する湯流れ接種や鋳型内の湯道に接種剤を置き、注入された溶湯と反応させる鋳型内接種(インモールド法)なども行われています。
接種の方法

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▼黒鉛球状化処理

黒鉛がなぜ球状化するのかについては、いろいろな説がありますが、本当の原因についてはハッキリとしていません。
しかし、球状化剤であるMgやCa更にCeは脱酸剤であり、脱硫剤であり、溶湯中で気泡を発生させるなどの働きをします。
又、接種の場合と同様に、球状化処理後溶湯状態で放置しておくと、その効果が消失していく性質があります。 従って、処理後はすみやかに鋳込むことが必要となります。

■球状化剤の成分例
添加合金の種類
添加量(%)
Mg歩留り(%)
反応の程度
備考
純 Mg
Mgとして
0.6〜1.0
5〜10
甚大
 
Cu-Mg (50 : 50)
       (80 : 20)
0.6〜1.0
0.2〜0.5
5〜10
10〜20
甚大
 
Ni-Mg (50 : 50)
      (80 : 20)
0.5〜0.7
0.2〜0.5
5〜10
10〜20
甚大
 
Fe-Si-mg (45 : 45 : 10)
       (30 : 30 : 20)
       (45 : 30 : 5)
0.2〜0.4
0.2〜0.4
10〜30
10〜30


極小
一般に多く用いられている
最近Mg3%程度のものまで使用さfれている
Ni-Si-Mg (10 : 50 : 20)
0.2〜0.4
10〜30
 
Ca-Si-Mg (30 : 55 : 10)
       (20 : 45 : 20)
0.2〜0.4
0.2〜0.4
10〜30
10〜30
 
マグコーク        
R-Ca-Si
(13〜30) : (10〜13) : (50〜60)
   
 
Fe-Ca-Si
(12〜20) : 18 : (40〜55)
   
 
Ca-Si (30〜35) : (55〜60)
Caとして
0.2〜0.6
 
Ca-Siのみではなく、これの粉末にCa塩化物を被膜したものをしよう
Mg F4
   
Mgの化合物、粉末
ミッシュメタル
セリウム強化メタル
イットリウム・ミッシュメタル
   


 
Fe-Si       特に含有酸素の低いもの


球状化剤
球状化剤としてはMg系、Ca系、更にCe系など多くの種類がありますが、一般的にはMg系のものが多用されています。
このMgは安価ですが、沸点が低いため溶湯と接触すると爆発的に反応するため、様々な工夫がなされています。
一つはFe-Si などのSiと合金化させてMgの濃度を低くし、反応を抑える方法。
もう一つは、球状化処理を行う容器内を高圧に保つことで、Mgの爆発的な反応を抑える方法です。この方法では安価な純Mgが使用可能なため、大量生産が行われる鋳鉄管などの生産に使用されています。


球状化処理方法


球状化処理方法[ 合金化Mg使用 ]
サンドイッチ添加法
取鍋の底にポケットを付け、そこにMg合金を入れ、その上に溶湯が取鍋の規定の位置まで満たされるまで反応を抑制するためのカバー剤を被せます。
溶湯はポケット部に直接当らないよう速やかに注入します。
使用する取鍋はMgの歩留りを良くするため深さを直径に対し、1.5 〜2.0 程度の深目とします。又、使用合金のMgは8〜3%程度の比較的低濃度のものが使用されています。
現在では、この方法が最も多く実用されています。
プランジング法プランジング法
黒鉛製、又は鋼製の孔の開いたベル状の容器にMg合金を詰め、それを溶湯中に押し込んで反応させる方法です。
又、ベル状容器の代わりに合金ブロックの中央に金棒を鋳ぐるんだキャンデー 法もこの一種です。
この方法に使用されるMg合金はサンドッチ法に比べ、高Mg合金が使用されています。この方法はサンドイッチ添加法が普及するまでは多く使用されていました。

インモールド法インモールド法
鋳型内に球状化剤を入れる反応室を設け、脱硫した溶湯を注入すると反応し、その後鋳型の製品部分に入るものです。
鋳型内での反応であるため、これに使用される合金はMg濃度の低いものが使用されます。
この方法の欠点は反応室設置部分は製品とならず、その分歩留まり低下となることにあります。

 

[ 純Mg使用 ]
圧力添加法・・・・・ 圧力添加法 圧力容器法
この方法は反応させる容器内に圧力をかけ、Mgの蒸気圧を抑え込み蒸気化したMgを溶湯中に圧力で押し込むものです。
大気中でMgを添加すると、爆発的な反応で溶湯が飛散して危険で、Mg歩留りも低くなりますが、圧入で反応も穏やかでMg歩留りも向上します。
方法としては、取鍋自体を圧力容器とする方式と、圧力容器の中に取鍋を入れ、空気圧を3〜8Kg程度にかけ、その後圧力シリンダーでMgを溶湯中に押し込み反応させる方式があります

圧力添加法・・・・・ 圧力添加法 圧力容器法
転炉法(コンバーター法)
転炉の底部の一角に孔の開けられた黒鉛製の仕切り板で囲まれた反応室を設置し、転炉を水平状に倒した状態で、反応室にMgを装入して蓋をします。
その後、転炉を垂直に起こすことで、溶湯とMgが接触し反応するものです。反応状況のコントロールは仕切り板の孔のサイズで調整されます

転炉法(コンバーター法)

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