CASTING 鋳物ハンドブック
鋳物の特長と種類
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なぜ鋳物か
金属のいろいろな加工方法の鋳造の項で、鋳物は固体の金属を溶解し、自由に変形しやすい液体に変えて鋳型に流し込み、目的の形を一挙に作り上げることができるということに大きな特長があると説明しました。
例えば、右の図のようにフランジ付きのパイプを他の工法で造る場合を考えてみましょう。
この場合、1.直管部の制作には圧延、又は型鍛造、又は板を管状に曲げ、溶接によってつなぎパイプを造る工程が必要となります。
2.次に板を切断しドーナツ状のフランジを造る工程が必要です。
3.最後に直管のパイプとフランジをつなぐため溶接するという工程が必要です。
このように、単純な構造の製品を造る場合でも、鋳物以外の工法で造ると、いろんな加工法の組合わせが必要であり、更に、多数個造る場合このような工程では生産性が低いと言う問題点があります。又、自動車用エンジンのように複雑な形状で、且つ大量生産が必要な製品は、鋳物以外での生産は不可能と言えます。鋳物では最初に模型を造っておけば、どんなに複雑な形状でも、液体の金属を流し込むことで一挙に鋳型通りの鋳物ができ、且つ、同じ模型を使うため全く同じものが何個でも造れることになります。
今、先のフランジ付きパイプを鋳物で造る場合を見てみましょう。1-模型の準備
少量生産では木型、大量生産では磨耗しにくい金型で造られます。
1.主型:パイプの外側を形成する模型で、縦方向に二つ割りできるようにします。 又、中子を支えるための幅木を付けられます。
2.中子型:パイプの内面を形成する模型で、主型の幅木にはめ込むための幅木が付けられ、更に模型から中子が取り出せるように二つ割りにします。2-その他の準備
1.型枠:主型の砂型を支えるための枠で、上型と下型を準備します。
2.定盤:主型の上型と下型を合わせた時、隙間が出来ないようにするものです。3-鋳造
砂型の準備が完了すると、湯口から溶解した金属を注入することで一挙にパイプが出来上がります。
後は不要な湯口部分を取り除くことで完成です。 -
鋳物の種類
鋳物は他の加工方法と異なり、複雑な形状の製品でも一挙に生産できるという特長がありますが、ではこの鋳物にはどのようなものがあるのでしょうか。
鋳物には使用する金属、更に製造方法によって、大きく分けて次のように分類されます。又、その特性によってそれぞれ使い分けられています。- 種類
- 規格
- 鋳鉄(銑鉄鋳物)
- ネズミ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、CV黒鉛鋳鉄、オーステンパ球状黒鉛鋳鉄、白心可鍛鋳鉄、パーライト可鍛鋳鉄
- 鋳鋼
- 炭素鋼鋳鋼、構造用合金鋳鋼、ステンレス鋳鋼、耐熱鋼鋳鋼、高マンガン鋼鋳鋼
- 銅合金
- 青銅鋳物(砲金)、りん青銅鋳物、アルミ青銅鋳物、鉛青銅鋳物、黄銅鋳物(真鍮)、高力黄銅鋳物
- アルミ合金
- アルミニウム合金鋳物、アルミニウム合金ダイキャスト
- その他
- マグネシウム合金鋳物、亜鉛合金ダイキャスト、ホワイトメタル、アンチモン鋳物、すず鋳物、鉛鋳物
いろいろな鋳物製品
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古代の鋳物
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船舶・鉄道と鋳物
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家庭で見られる鋳物
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町中で見られる鋳物
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機械と鋳物
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お寺や神社と鋳物
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ガス・水道と鋳物
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自動車と鋳物
自動車用鋳物の多くはエンジン周りにあり、鋳物部品としては100点ほどになるといわれています。
その他、足周り部品など、様々なところに使われており、自動車の全重量の約10%を銑鉄鋳物部品が占めています。
これらは外面からはほとんど見られず「見えない鋳物」といえます。